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大内・前沢宣言

第39回全国町並みゼミは、「町並みを次の世代へ~保存と暮らしの共存~」をテーマに、緑濃き、水清い美しい自然と茅葺き集落を守り、育ててきた福島県南会津の下郷町大内宿、南会津町前沢集落を中心に9月9日から11日まで開催された。大内宿は第9回大会以来30年ぶり、前沢集落は初めてのゼミ開催である。両地区と、南会津の中心である田島地区でも、歴史的な町並みの保存と生き生きとした暮らしの持続・発展をめざして、全国から集まった参加者と地元の人々、約400人が、現地見学や分科会等、熱い討議と経験交流を続けた。

 初日の全体会は、下郷町ふれあいセンターで開催された。開会行事のあと、篤志家の寄付をもとに今年度あらたに創設された「峰山冨美賞」の受賞式が行われた。小樽運河の保存運動の先頭に立ち、全国各地の様々な保存活動に大きな影響を与えてきた峰山冨美さんの業績を顕彰するこの賞の第1回の受賞者は、広島県福山市鞆の歴史的港湾と町並みの保存に向けて、仲間と共に長年にわたって活動し続けてきた松居秀子さんである。松居さんは、「自分たちの活動は峰山さんに励まされて始まり、勇気をもらって発展してきた。」と受賞の喜びを語り、ゼミ参加者一同もその思いと決意を共有した。

続いて北海道大学教授西山徳明さんの進行で「町並みを次の世代へ」をテーマに地元大内宿の吉村徳男さんと岐阜県白川村の和田正人さんの対談が行われた。地域の伝統行事や茅葺きの伝統技術の継承、保存地区内の交通対策など、両地区での実践が語られ、地域コミュニティの持続と暮らしの発展こそ歴史的町並みと豊かな郷土を次世代に伝える基盤、との認識で一致した。

「各地からの報告」では、開催地からの報告も含めて17もの報告が行われ、火災や震災からの復旧、地域での独自の町並みゼミ開催、修理修景の問題、危機に瀕する歴史的建物の保存への訴えなど、多様な活動状況や直面する課題が呈示された。7会場に分かれてのブロック別会議では、ブロック活動の活発化の課題や各ブロックの固有の課題について討議された。その中では、たとえば伝建地区における修理修景事業のあり方、自治体行政の課題等も浮彫りになった。

2日目は大内宿で2、前沢集落で2、田島地区で1の合計5つの分科会が開催された。

第1分科会は旧大内分校で開催され、「町並み保存と活用」をテーマに5班に分かれて「大内宿の魅力と課題」について、フィールドワークをもとにワークショップ形式で意見を出し合った。「暮らしを含め、建物内部空間の魅力を楽しめる努力とともに、町並み景観への細かな配慮の積み重ねが大切である」という方向性を確認した。

第2分科会は大内集会所で開催され、「人が住み続けられるまち」をテーマとして議論を深めた。町並みの保存のためには地域経済を成り立たせていくことが不可欠であることを確認すると共に、観光の本質は観光客におもねず、「人の生業がしっかりあること」、「衣食住の文化をみがくこと」が基本であるとの思いを共有した。そして「保存という開発」という、私たちの活動の目標を的確に表現する魅力的な言葉も発信された。

第3分科会は前沢交流館で開催され、主に歴史的町並みにおける防火の課題が議論された。出火させない予防がまず大切であること、出火した場合は住民自身による初期消火が重要であることを、前沢地区住民の放水実演も踏まえて明らかにされた。そして、防火は地域の実状に合った適切な対策が重要であることが再確認された。

第4分科会は前沢曲家資料館を会場として、「農村集落の生き残り方」をテーマに開催された。この分科会では、地域の自治・自立の力が重要であり、それは外部との交流によって、より豊かに培われてゆくものであることが確認された。

第5分科会は田島の御蔵入交流館で開催された。まず奥会津博物館にこの地域の過去を訪ね、ワークショップでは田島の現在の町並みを訪ねて、地域の未来を考えた。藻谷浩介さんの基調講演では南会津町の人口動態から見た未来が示され、続いて地元の活動家の二氏からの報告があった。そしてワークショップの結果としてこれまで地元では十分意識されてこなかった田島の魅力と価値が明かにされ、今後の田島のまちづくりに展望を与えた。

 本ゼミを通じ、私たちは、大内宿と前沢集落、そして田島地区を舞台に、保存と暮らしの共存をめぐる様々な課題に取り組んだ。この地域の人々の歴史的町並みや環境の保存と継承への多様な努力と工夫を学び、また全国各地の経験を伝え合った。そして、地域の特性や資源、そして暮らしを大切に継承・発展させようとする私たちの歴史的町並み保存運動が、うわべの経済指標を超えた真の地域振興策となる可能性をも見いだした。

 以上、歴史的町並みをはじめとする文化遺産の保存と活用や環境保全がようやく我が国の経済発展への主要目標の一つとして位置づけられるようになった現在、私たちはそれを積極的に受け止めると共に、コミュニティの絆を大切にする中で保存と暮らしを両立させ、その価値を次世代に伝える努力を、全国の仲間とともに続けていくことを、ここに宣言する。

 

2016年9月11日

第39回全国町並みゼミ参加者一同

 

2016年9月13日

第39回全国町並みゼミ大内・前沢大会を開催しますー終了しました

今年の全国町並みゼミは、福島県の大内宿と前沢集落という2つの茅葺きの重要伝統的建造物群保存地区を中心に開催します。 
大内宿は第9回以来、30年ぶりの開催、エクスカーションでは会津若松や喜多方の見学会も用意しています。
みなさんの参加をお待ちしています。

日時:平成28年9月9日(金)~11日(日)
 会場:1日目 下郷ふれあいセンター(会津鉄道「会津下郷」駅から徒歩約15分)
                      *新白河駅から送迎バスあり)
    2日目 大内宿、前沢集落、田島会場で5分科会
    3日目 御蔵入交流館(会津鉄道「会津田島」駅から徒歩約10分)
        *新白河駅に送迎バスあり

チラシ(表)

チラシ(裏)

募集案内

参加申込書

大内宿 前沢集落_R

 

2016年7月8日

農業共済新聞に寄稿

農業共済新聞(公益社団法人全国農業共済協会発行)1月2週号(1月13日発行)に、福川裕一理事長が寄稿しました。

タイトル:「保存」から「開発」へ

農業共済新聞160113

2016年1月15日

第6回関東町並みゼミin栃木

全国町並みゼミのブロック会議から発展した「関東ブロック会議」を、
今年は、「関東町並みゼミ」と名称を変えて、栃木県栃木市で開催します。

日時 2015年9月26日(土)13時~17時 *午前中はまちあるきです

会場 蔵の街観光館多目的ホール(栃木県栃木市万町4-1) *JR・東武「栃木駅」より徒歩15分

スケジュール
10:00~10:30  「小山高専サテライトキャンパス」集合 *15名になり次第、順次まち歩き出発(嘉右衛門町及び栃木町)
12:00 昼食 *見学会参加費に昼食代が含まれています。食事処紹介
13:00 開会
      基調講演「歴史的町並み保存の現状と未来」
        苅谷勇雅(副理事長・元文化財監査官)
14:00 各地からの報告  
15:30 意見交換会 A)町並みとまちづくり B)防災と復興 C)町並み保存入門
17:00 閉会
17:15 懇親会(太郎庵・蔵座敷)

参加費 資料代2000円(昼食代1000円含む)、懇親会3000円

申込み締切 9月19日(土)*下記の申込書で栃木蔵街暖簾会事務局まで
栃木蔵街暖簾会事務局(殿塚治) Fax : 0282-22-0755 mail : mimasuya@d3.dion.ne.jp

 

チラシ 申込書

2015年8月26日

豊岡宣言

 第38回全国町並みゼミは、「ふるさと よみがえりへの想い」をテーマに、幾多の災害を乗り越え美しい町並みをつくりあげてきた兵庫県北部・但馬の中心・豊岡市内の四つの町を舞台に開催され、今なお町づくりの最先端を切り開こうとする市民の姿が、全国から集まったのべ1200人の参加者に大きな感銘と勇気を与えた。コウノトリですっかり有名になった豊岡だが、わたしたちは、そこにコウノトリを育む自然と美しい町並みが不可欠に結びつく、21世紀の地方のモデルを見出した。

 初日の全体会は、大規模な改修によって蘇り、豊岡の新しい町づくりのシンボルとなった城崎国際アートセンターで開催された。基調講演は、豊岡の復興建築保存にかかわってきた西村幸夫東京大学教授。その経験を紹介しながら「まちに刻まれた想いが生活文化の未来につながる」ことを訴えた。続いて同教授の司会で行われた各地からの報告では、準防火地域の撤廃や災害に備える模索などの積極的な動きがある一方で、竹富島のリゾート開発問題、防災に名を借りた景観破壊が懸念される鞆の浦の防潮堤問題、修復が進んでも空き家が増えて行く現状など、町並み保存が置かれた新たな課題が浮き彫りになった。

 2日目の分科会の舞台となったのは、城崎、出石、豊岡、竹野の四つの町である。大正14年の北担大震災後、住民の総意で木造三階建ての町並みを復活した城崎では、ふたつの分科会が持たれた。第一分科会では、今日では既存不適格となる木造三階建てを事例に、歴史的建物をどのように活用していくか、そのための法的な障害をどのように乗り越えるかをテーマとした。パネラーの中貝豊岡市長から、豊岡市が建築基準法の適用除外条例を制定する準備をすすめていることが発表され、この分野で豊岡市が最先端にあることが明らかになった。第二分科会では、町づくりに災害復興から何を学ぶかをテーマとした。城崎の復興の経緯が詳細に明らかにされ、安全への備えは、被害を小さくする日頃の準備が重要なこと、そして復興における適切なリーダーシップと住民の意思決定こそが重要ということが確認された。

 城下町出石も、明治9年に大火があり、現存するのはそこから復活した町並みである。その町並みの保存と活かし方をめぐってふたつの分科会が持たれた。第三分科会は、つい最近復活がなった芝居小屋「永楽館」をめぐり、全国各地でも動きのある芝居小屋復活には、その都市の社会と文化を守り育てる大きな意味があることが確認された。第四分科会では、観光化が歴史的町並みの美しさを損ねている現状を踏まえ、活気と美しさの両立が話し合われた。

 北但大震災の復興にあたり、城崎と対照的に近代的都市をめざした豊岡では、当時の復興建築をめぐって第五分科会がもたれた。これら建築が評価されるようになったことは良いとして、それらだけを取り出すのではなく、震災を生き延びた町家や、震災後に建設された町家、城下町の痕跡など、都市の歴史を総体として評価していくべきという問題提起がなされた。

 北前舟の寄港地・竹野の焼き杉板貼りを特徴とする町並みは、本ゼミの参加者から「未発掘の町並み」として驚きをもって迎え入れられた。竹野で開催された第六分科会では、地元大工による杉板を焼く実演も行われ、地域固有の建物を守る意味と必要性が痛感された。なお、この竹野の町並みも大正7年の洪水後に再建されたものである。

 今回のゼミに先立つ本年1月、城崎で起きた火災は、町並み保存のための規制緩和の動きを押しとどめるのではないかと懸念された。しかし、本ゼミにおいて、この火災が、木造そのものに起因するのではなく、木造でも適切な措置が取られれば防止の手立てがあることが冷静に指摘された。

 本ゼミを通じ、私たちはふたつの点を確認した。第一に、私たちは繰り返し起こる災害に対し美しい町並みを復興する能力を備えている。来たるべき災害への備えは、自然を征服する土木工事とは異なる方法が模索されなければならない。第二に、こうして築いてきた歴史的町並みは、今や地方創世の不可欠な手がかりとなった。しかしその保存・活用には、これまでの価値観を転換する必要がある。都市計画法、建築基準法、文化財保護法、旅館業法など諸制度は確実に見直される必要がある。

 以上、私たちは、町並み運動の使命を再確認し、その実現に最大限の努力を傾けることをここに宣言する。

 

2015614

38回全国町並みゼミ参加者一同

 

2015年7月6日

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